【持続化給付金】前年同月比50%以上減少を満たす方法

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持続化給付金の要件である「前年同月比で事業収入が50%以上減少した月があること」があと少しで達成できないといったケースが多いようです。

また、前年2019年の売上がそもそも少ないため、さらに50%以上減少するのが難しいというケースもあります。

しかし、給付要領や給付規程をしっかり読んでみると、実は要件を満たす方法がいくつかあります。

そこで今回は持続化給付金の前年同月比50%以上減少を満たす方法を紹介したいと思います。

前年月平均で判定する方法(個人事業者かつ青色申告)

個人事業者で青色申告をしている方は、前年同月比だけではなく「前年(2019年)の月平均」と比較して50%以上減少していれば、給付要件を満たすことができます。

これは、個人事業者の白色申告者は前年の月平均で比較するのに対し、青色申告者は前年同月比で比較するという差異をなくすためです。そのため、青色申告者は前年同月比と前年月平均のどちらかを選択して比較することが可能となっています。

たとえば、前年2019年1~12月のうち1ヶ月だけ収入が大きかった場合、下記のようなケースが想定されます。

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
2019年1001008001001001001001001001001001001,900
2020年10010070080

このような場合に5月以降も毎月80くらいが維持された場合、原則として要件を満たしません。もし、満たすためには月50以下まで減らす必要があります。

しかし、2019年の月平均は1,900÷12ヶ月で158.33ですので、月平均50%以下にするのであれば1ヶ月79.16以下となれば要件を満たすことが可能です。

これであれば少し値下げすれば要件を満たせそうです。

注意点としては、この判定方法を使用する場合は青色申告決算書を提出しないようにすることです。青色申告決算書を誤って提出してしまうと前年同月比で要件を満たしていないことから不支給となってしまいます。

前々年同月比で判定する(3~4月決算法人)

3、4月決算法人は現在決算をされている真っ最中かと思います。

3月決算法人は5月末、4月決算法人は6月末が原則的な法人税の申告期限です。

しかし、申告した後と前では持続化給付金の判定に大きな違いが出てくるためご注意ください。

申告する前であれば前々年同月と判定することが可能なのですが、申告してしまうと2019年が確定してしまうため原則通り前年同月と比較することになります。

例えば下記のようなケースです。

4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月年間
2019年3月期5005005005005003003003003003003003004600
2020年3月3003003002005005005005005003003003004500
2021年3月期200

こういった場合、4月を対象月にしようと思っても2020年3月期の申告が終わった後は前年同月300に対して50%以上減少しなければならなくなってしまいます。
しかし、2020年3月の申告をする前であれば特例により2019年3月期の4月(2018年4月)の前々年同月比と比較することが可能です。

現在3、4月決算法人は申告期限が延長されているため、あえて申告するのを保留し、持続化給付金の申請を先にしていただく方が良いことがあります。

ただし、2月決算法人などの申告期限が延長されていない法人が申告がまだ終わってない場合や申告書の控えがない場合には上記特例は適用されず、税理士の署名押印のある月次事業収入証明書を提出することになるため、前年同月と比較することになります。

あえて前年同月比で判定する(2019年設立した法人・開業した個人)

2019年に設立した法人と開業した個人には創業特例・新規開業特例という特例があります。

意外とこの特例に目が行き過ぎて、原則による判定ができないと誤解されている方がとても多いのです。

2019年に設立した法人と開業した個人は特例による判定ができますが、原則通りの判定も可能です。

まず、2019年に設立した法人と開業した個人は2019年の月平均で判定できるのが創業特例・新規開業特例です。その際、注意するのは2019年の月平均の事業収入は、設立(開業)してから2019年12月までの月数で割るということです。

一方、この特例の方法では要件を満たせない方でも、原則通り前年同月比と比較して50%以上減少という要件が満たせれば申請は可能です。

よくあるパターンとしては、開業セールやもともと他の法人から分割した法人などはこういったケースに該当する可能性があります。

例えば下記のようなケースです。

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
2019年5003003003003003003003002,600
2020年300300300200

こういった場合、特例による計算をすると325(2,600÷8ヶ月)から50%以上減少した162.5まで月間事業収入が減少しなければなりません。

しかし、原則通りであれば5月は250、6月以降は150以下となれば50%以上減少という要件を満たすことが可能です。

特に開業した2019年5月の収入が多いことから、2020年5月の収入を調整すればほとんど売り上げの減少がなくても要件を満たすことが可能です。

事業譲渡してしまう(事業を分割できる法人・個人)

この持続化給付金の給付要件には、事業譲渡や分割をした場合の特例が用意されていません。

たとえば、Aさんが株式を100%所有しているB社とC社という同族会社があったとします。どちらの会社もこのままいくと2020年中に前年同月比50%以上減少という要件を満たせそうにありません。

そこで、B社で一番収入を稼いでいるD事業をC社に譲渡することにしました。タダで事業譲渡すると税務上も問題なので、このD事業の年間利益の5年分を譲渡対価と設定しました。

こうした場合、事業譲渡を行ったB社は、事業譲渡を行った月は事業譲渡の対価があるため収入は大幅に増加してしまいますが、その月以降はD事業の収入がなくなるため月間事業収入は減少します。そして、50%以上減少という要件が満たせる可能性が出てきます。

一方、個人の場合でも上記のように事業譲渡という方法もありますが、事業承継という方法がイメージが付きやすいかと思います。

たとえば、先代のAさんが事業承継として子供のBさんに事業を承継した場合に、Aさんの月間事業収入はどうなるでしょうか?そう0円になるのです。

ただし、事業のすべてを譲渡してしまうと「今後も事業を継続する意思があること」という要件から外れてしまうためご注意ください。

現状、上記のような場合にも要件から除外するような規定がないのです。

税金の法律にはこういった「法律逃れ」のような行為に対して常に新しい法律を作り、防止しているのですが、現状持続化給付金の申請規程、給付規程にはそのような規程がないため可能となっています。

後日、規程が追加される可能性もあるため、そのリスクをとるかどうかはご自身の責任でご判断ください。

法人成り、個人なりする(事業を分割できる法人・個人)

上記「事業譲渡してしまう」という方法とほぼ同様の方法となります。

現在の事業が複数の事業に分けられる場合には1つの事業を別法人にする、または個人に移すことにより、要件を満たすことが可能です。

自動車の販売・修理をやっている会社であれば、販売事業だけを個人に移すことにより、法人の事業収入を減少することが可能です。

大がかりなスキームになる可能性が高いため税理士に相談してから実行することをお勧めします。給付金をもらうために給付金額以上のリスクが生じる可能性があります。

売上の計上時期を見直す

「入金の時期をずらせば50%以上減少を達成できるのでは」という情報が出ていますが、当事務所としてはあまりお勧めしません。

確定申告の収入の計上する原則的な方法は発生主義、つまり物の販売なら納品したタイミング、サービスの提供であればサービス提供が完了したタイミングで計上します。

その収入の回収時期をずらしただけでは、後日調査のうえ不支給という結果が出ても文句は言えません。

ただし、実現主義のもとに収入の計上時期をずらし、支給要件を満たしたのであれば、問題はないと考えています。

物の販売をしているのであれば注文は受けるが納品しない、製造やサービスであれば予約は受けるが作業はしない。

つまり、「実際に休業してしまう」という方法になります。

また、今休業して従業員に休業手当を支給すれば雇用調整助成金の支給が受けられる可能性もあります。

ただ、なかなかそんなことはできないという事業者の方は多いと思います。

そのため、今年の売上だけではなく、前年の売上が実現主義になっているかを見直すという方法もあります。

通常、税理士に依頼している場合でも月ごとの売上は入金日であったり、請求書の発行日だったりしています。そこで、それらを実現主義に修正することにより、前年同月の売上が増加し、要件を満たせる可能性が出てきます。

まとめ

今回は持続化給付金の前年同月比50%以上減少を満たす方法をいくつか紹介させていただきました。

2020年12月までのいずれかの月で要件を満たせればよいのですが、「あと数万円売上が減少できれば持続化給付金がもらえる」というケースも想定されます。

そのために、事前に自分がいくらの収入まで減少すれば要件を満たせるのかを把握したうえで調整休業するというのが賢いと思っています。