第2次岸田内閣発足により、政府が経済対策の柱の一つとして検討している中小企業向けの新たな給付金が創設されました。
新たな給付金の名称は「事業復活支援金」。新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業は業種を問わず対象となり、事業規模によっては最大で250万円を支給します。この点、緊急事態宣言等の影響を受けた地域・業種に限定していた一時支援金や月次支援金とは異なり、昨年の持続化給付金のような地域・業種を問わない給付金です。
※本記事は2022年1月24日時点の情報です。最新の情報は事業復活支援金ポータルサイトまたは中小企業庁ホームページなどでご確認ください。
※個別の相談には対応しておりませんので電話、問合せフォームなどからのお問い合わせには一切応じません。
給付対象
まず、どのような方が給付の対象となるかについて説明します。
事業復活支援金の給付対象は下記の通りです。
新型コロナウイルス感染症の拡大や長期化に伴う需要の減少又は供給の制約により大きな影響を受け、自らの事業判断によらずに対象月の売上が基準月と比べて50%以上又は30%以上50%未満減少した法人及び個人事業主 |
要約すると「新型コロナの影響で2021年11月~2022年3月の売上が、過去3年の同月のいずれかの売上に比較して30%以上減少している法人と個人事業主」という要件となります。
「対象月」や「基準月」という用語の説明は下記の通りです。
対象月 | 2021年11月から2022年3月のいずれかの月 |
基準月 | 対象月の前年または前々年、3年前と同じ月で、売上高の比較に用いた月 |
したがって、売上の減少要件は2021年11月から2022年3月までの間で1ヶ月の売上を、前年または前々年だけではなく、3年前と比較することが可能です。
さらに、50%以上減少した事業者だけでなく、30%以上減少した事業者にも支給されます。この点については過去の持続化給付金・一時支援金・月次支援金と比較しても要件が緩和されています。
また、「新型コロナウイルスの影響」については9つの類型が定められており、申請する場合はいずれかの類型を選択する必要があります。

給付額
給付額については、売上の減少率や事業規模ごとに下記のとおり給付上限額が定められています。
給付上限額
50%以上減 | 30%以上減 | |
個人事業主 | 最大50万円 | 最大30万円 |
法人(年商1億円未満) | 最大100万円 | 最大60万円 |
法人(年商1~5億円) | 最大150万円 | 最大90万円 |
法人(年商5億円以上) | 最大250万円 | 最大150万円 |
マスコミ等で「最大250万円」というワードが飛び交っていますが、250万円給付されるのは年商5億円以上の法人に限定されており、多くの方は個人事業主最大50万円、法人は100万円に該当すると思われます。
さらに、上記はあくまで「上限額」で実際の給付額は下記の計算式で求めます。
給付額 = 基準期間の売上高 ー 対象月の売上高×5 |
基準期間の売上高は、売上の比較に用いた基準月の属する11月~3月の売上を意味します。そのため、過去の売上が少ない場合や、売上の減少額が少ない場合には、給付額が上限額に満たない可能性があるため注意しましょう。
また、売上の減少率に応じて給付額も変動するため、できれば50%以上減少となった月を対象月として申請した方が良い点に注意が必要です。
なお、一旦30%以上減少した月を対象月として申請したものの、後日50%以上減少した月が生じた場合、あらためて再申請することは可能です。ただし、この再申請をする場合には初回申請の方の受付終了後となるため、5月31日以降に差額給付再申請の受付が開始される予定です。したがって、給付されるまでには時間がかかります。
また、個人事業主の方で白色申告者の場合(青色申告者で青色決算書を提出しない場合)には、基準月の売上はその年の月平均売上となり、また法人の年商の判定は基準月の属する事業年度で判定します。
申請期間
申請開始については2022年1月31日から開始となりました。
一方、申請期限については2022年5月31日までです。
なお、対象月の売上が確定しなければ給付要件が確認できないため、選択した対象月の翌月1日以降でなければ申請できません。例えば、2月を対象月とした場合には、2022年3月1日から申請が可能となります。
また、個人事業主が基準期間に2021年1~3月が含まれる場合には令和3年分の確定申告書を税務署に提出した後でなければ申請できないため、申請期限がタイトになる点に注意が必要です。法人も同様に1月決算の法人が2021年2月を基準期間に含む場合にも、直近の確定申告書を提出した後でなければ申請できません。
事前確認
従来実施されていた一時支援金や月次支援金と同様に、申請前に「事前確認」という手続きが必要となります(既に一時支援金・月次支援金を受給されている場合は省略できます)。
事前確認とは、申請希望者が①事業を実施しているか、②新型コロナウイルス感染症の影響を受けているか、③給付対象を正しく理解しているか等を、登録確認機関(金融機関や税理士等の士業)の確認を受ける手続きです。持続化給付金の際には、この手続きがなかったため事業を行っていないサラリーマンなどの誤認受給・不正受給が多く生じたため、事前確認という手続きが設けられました。
ただし、事前確認を行う登録確認機関には、書類の確認や申請希望者との面談という手続きを任せておきながら、給付金事務局からは1件2,000円(一定の件数がない場合には支給されない)しか登録確認機関に支給されません。そのため、多くの登録確認機関では「事業性融資のある取引先」「顧問契約をしている取引先」については無償で事前確認を実施していますが、それ以外の申請希望者に対しては実施しないまたは有償で対応しています。
したがって、融資や顧問契約のない申請希望者は、事前確認に対応してくれる登録確認機関を探さなければなりません。また、税理士は個人確定申告などの業務があることから、1~3月はとても忙しい時期となります。そのため、事業復活支援金の事前確認に対応しない税理士も多くなることが予想されます。
当事務所では近隣の地域に限定し、5,000円(税込)にて事前確認を行っております(2022年5月13日をもって受付終了)。詳細は下記のページよりご確認ください。
申請方法
申請方法については従来の一時支援金や月次支援金と同様に、ポータルサイトにてID・パスワードを登録して、申請する方法になります。
なお、一時支援金や月次支援金の受給者は、同じIDを引き続き使用することができ、下記の必要書類のうち一部が省略できます。
一方、インターネット上で「GビズIDを使用した申請になるのでは」という情報がありましたが、GビズIDがあまり普及していないことや、一時支援金・月次支援金における申請者情報等が活用できないことからも、 GビズIDは使用することはありません。
必要書類
必要書類については従来の一時支援金や月次支援金と同様に、下記の書類が必要となります。
法人 | 宣誓同意書 通帳の表紙・見開き 確定申告書控え(法人事業概況説明書を含む) 対象月の売上台帳 履歴事項全部証明書 |
個人事業主 | 宣誓同意書 通帳の表紙・見開き 確定申告書控え 対象月の売上台帳 本人確認書類 |
なお、事業復活支援金では事前確認機関と継続支援関係(顧問契約や事業性融資など)がない場合には、さらに下記の資料の提出が必要となります。
事前確認機関との継続支援関係がない場合の追加書類 | 基準月の売上台帳等 基準月の売上に係る1取引分の請求書・領収書等 基準月の売上に係る通帳等(取引が確認できるページ) |
なお、事業において通帳等を全く用いていない場合など、合理的な理由により提出できない場合には、ポータルサイトに公開されている「基準月の売上に係る請求書・領収書等又は通帳等の提出が不可能であることの申立書」を提出する必要があります。おそらく、この申立書の記載内容によっては給付までに時間を要する可能性が高いと思います。
注意点・キーポイント
基準月として過去3年の売上と比較することが可能
過去の給付金では前年または前々年の2年間との比較でしたが、事業復活支援金では前年、前々年に加え3年前との比較が可能です。
対象月を2021年11月とした場合には、2018年11月、2019年11月、2020年11月のいずれかから比較して売上が30%以上減少していれば給付対象となります。
協力金との併給
事業復活支援金は、飲食店などの協力金との併給が可能です。
ただし、協力金の対象となる時短営業や休業等を実施した月を、事業復活支援金の対象月として選択する場合には、協力金を事業収入(売上)に算入しなければなりません。
つまり、協力金を売上に含めても売上30%減少という要件を満たせているようであれば事業復活支援金も申請可能です。
なお、協力金は支給日ではなく、発生日を基準に事業収入に算入します。たとえば、1月21日~2月13日の休業要請に協力し、協力金72万円(1日あたり3万円)を4月に受給した場合、1月の事業収入には33万円(3万円×11日)を算入し、2月の事業収入に39万円(3万円×13日)を算入します。4月に受給したとしても関係なく協力期間に応じて算入します。
また、2021年11月や2021年12月のように時短営業や休業等を実施していない月を対象月とするのであれば、協力金に関係なく事業復活支援金を申請することが可能です。
個人事業者が白色申告の場合の基準月・基準期間の売上はどうするのか?
過去の給付金では、個人事業者で白色申告(青色申告の方も任意)の場合には、過去の月平均売上(年間売上÷12)を比較対象とすることができました。
今回の事業復活支援金でも、2018年~2021年のすべての年で月平均を使用することが可能です。
ただし、対象月が11月・12月の場合には2018年・2019年・2020年の月平均と、対象月が1月・2月・3月の場合には2019年・2020年・2021年の月平均との比較になります。
月平均を使用して50%または30%以上減少している場合、支給額の計算や申請時の入力事項はとても煩雑になるため、慎重に確認していただければと思います。
法人の年間売上高は、いつの事業年度で判定するのか?
法人の場合、年間売上高により支給額が異なります。
この年間売上高をいつの事業年度の売上高とするのかについては、基準月の属する事業年度の年間売上高を使用します。
したがって、基準月が複数ある場合には、年間売上高が高い事業年度の基準月を選択する必要があります。年間売上が1億円前後または5億円前後の法人は注意してください。
組織変更があった場合
有限会社から株式会社や、合同会社から株式会社などの組織変更があった場合でも、同一の法人であれば組織変更前の売上に対して組織変更後の売上を比較して30%以上減少しているようであれば、給付要件を満たします。
一方、吸収合併を行った場合には、原則として合併存続法人の売上に基づき給付要件を判定しますが、2021年11月から対象月の間に吸収合併を行った場合には合併特例を適用し、合併消滅法人の売上を加算し給付要件を判定することが可能です。
また、新設合併についても、原則として新設法人の売上に基づき給付要件を判定しますが、2021年11月から対象月の間に新設合併を行った場合には合併特例を適用し、合併消滅法人の売上を加算し給付要件を判定することが可能です。
給付金が入金される目安
「申請したが、いつまでたっても申請内容確認中のまま」という申請者の方が多くおります。
そこで、当事務所で申請をサポートさせていただいているお客様の申請日・給付日を公開いたしますので、参考にしていただければと思います。
※2022年3月16日時点
事業形態 | 申請方法 | 申請日 | 給付日 | 申請日から 給付日の日数 | 申請日から給付日の日数 |
法人 | 基本申請 | 2月2日 | 2月16日 | 15日 | |
法人 | 簡易申請 | 2月4日 | 3月15日 | 40日 | 3月1日不備連絡あり当日対応 |
法人 | 簡易申請 | 2月7日 | 2月21日 | 15日 | |
法人 | 簡易申請 | 2月17日 | 3月3日 | 15日 | |
法人 | 基本申請 | 2月28日 | 3月14日 | 15日 | |
法人 | 簡易申請 | 3月10日 | 審査中 | ||
個人事業主 | 簡易申請 | 1月31日 | 3月15日 | 44日 | |
個人事業主 | 基本申請 | 2月2日 | 2月24日 | 23日 | 2月8日不備連絡あり当日対応 |
個人事業主 | 簡易申請 | 2月10日 | 2月24日 | 15日 | |
個人事業主 | 基本申請 | 2月22日 | 3月7日 | 14日 | |
個人事業主 | 簡易申請 | 3月7日 | 審査中 | ||
個人事業主 | 簡易申請 | 3月7日 | 審査中 | ||
個人事業主 | 簡易申請 | 3月8日 | 審査中 |
上記の状況から「提出書類や入力内容に不備がなければ、15日後には給付される」と思われます。
ただし、不備がある場合にはすぐに不備連絡があるケースもあれば、不備連絡まで1ヶ月弱かかることもあるようです。
また、法人・個人事業主や簡易申請・基本申請などの申請内容によって、給付されるまでの日数に違いはありません。ただし、法人成り特例や新規開業特例などの特例を適用された場合には、上記以上の日数がかかることが想定されます(当事務所に実績がないため断言はできませんが)。
地方公共団体の給付金
国の実施している事業復活支援金とは別に、地方公共団体でも給付金が実施されている可能性があります。当事務所で確認した地方公共団体の給付金をリストアップしていきます。
ただし、すべての地方公共団体を網羅しているわけではありませんので、ご自身の事業所・住所等の所在する地方公共団体で給付金が実施されているかは、ご自身でご確認いただくようお願いいたします。
また、給付要件についても各地方公共団体により異なりますので、当事務所で確認した時点の情報で記載しております。申請される際には改めてご自身で売上の減少割合や事業復活支援金との併給の可否等をご自身でご確認ください。
地方公共団体 | 名称 | 売上減少対象期間 | 売上減少割合 | 給付上限額 | 備考 |
青森県弘前市 | ひろさき事業復活支援金 | 2021年11月~2022年3月 | 30%以上 | 法人40万円 個人20万円 | |
宮城県仙台市 | 中小企業等事業復活支援給付金 | ||||
栃木県宇都宮市 | 宮の事業復活支援金 | 2021年11月~2022年3月 | 30%~20% | 未定 | |
福島県喜多方市 | 喜多方市事業復活応援交付金 | 2021年11月~2022年3月 | 30%~20% | 10万円 | |
山梨県甲府市 | がんばろう甲府!事業応援金プラス | 2021年11月~2022年3月 | 30%以上 | 法人10万円 個人5万円 | 事業復活支援金に上乗せ |
静岡県 | 静岡県中小企業等事業継続応援金 | 2022年1月~3月 | 30%~20% | 1ヶ月あたり 法人10万円 個人5万円 | 事業復活支援金併給不可 |
石川県 | 石川県事業復活支援金 | 2021年11月~2022年3月 | 30%以上 | 法人30~50万円 個人12~20万円 | 事業復活支援金に上乗せ |
富山県 | 富山県事業復活緊急応援金 | 2021年11月~2022年3月 | 30%以上 | 法人20万円 個人10万円 | 事業復活支援金に上乗せ |
滋賀県 | 滋賀県事業継続支援金(第4期) | 2021年11月~2022年3月 | 30%以上 | 法人20万円 個人10万円 | 事業復活支援金に上乗せ |
福井県 | 中小企業者等事業継続支援金(令和4年1~3月期分) | 2022年1月~3月 | 30%以上 | 5~10万円 | |
三重県 | 三重県地域経済復活支援金 | 2022年1月~3月 | 30%以上 | 法人30万円 個人15万円 | |
岐阜県 | 岐阜県オミクロン株対策特別支援金 | 2022年1月~3月 | 15%以上 | 法人20万円 個人10万円 | |
香川県 | 香川県営業活動回復加速化支援金 | 2021年10月~12月 | 20%以上 | 30万円 | |
徳島県 | 徳島県事業継続応援金 | 2022年1月~2月 | 30%以上 | 法人40万円 個人20万円 | |
高知県 | 新型コロナウイルス感染症対策臨時給付金 | 2022年1月~3月 | 30%以上 | 75万円 | |
愛媛県 | えひめ版応援金(第3弾) | 2021年10月~12月 | 30%以上 | 法人10万円 個人5万円 | 事業復活支援金併給不可 |
鳥取県 | コロナ禍再生応援金 | 2021年11月~2022年3月 | 20%以上 | 法人20万円 個人10万円 | |
鳥取県 | オミクロン株影響対策緊急応援金 | 詳細未定 | |||
広島県 | 頑張る中小事業者月次支援金 | 2022年1月 | 30%以上 | 法人20万円 個人10万円 | |
熊本県 | 事業復活おうえん給付金 | 30%以上 | 法人24~40万円 個人12~20万円 | 事業復活支援金に上乗せ | |
宮崎県 | 県内事業者緊急支援金(1~3月影響分) | 2022年1月~3月 | 50%以上 | 10万円 | |
長崎県長崎市 | 2022年1月~3月 | 30%~20% | |||
沖縄県 | おきなわ事業者復活支援金 | 2021年11月~2022年3月 | 30%以上 | 事業復活支援金に上乗せ |