【持続化給付金】6月29日以降の支給対象の拡大について

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持続化給付金の支給対象の拡大が2020年6月26日に発表されました。

6月29日以降の申請については①主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者、②2020年1~3月に設立開業した法人個人事業者、③2019年中に設立開業した法人個人事業者で2019年に事業収入がない場合の3つが支給対象に加わりました。

今回は、それぞれの要件や支給金額の計算方法について紹介いたします。

1.主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者

今までの持続化給付金は個人事業者の場合は事業所得がある方のみを対象としていました。

しかし、実態は事業所得と同じにもかかわらず、音楽教室の講師の方が給与所得で申告している場合や、ライターの方が原稿料を雑所得で申告している場合などについても、今回の改正で支給対象に加わることとなりました。

①要件

事業継続要件

2019年以前から、雇用契約によらない業務委託等に基づく事業活動から収入であって、税務上、雑所得または給与所得の収入として計上されるもの(以下「業務委託契約等収入」といいます)を主たる収入として得ており、今後も事業継続する意思があることが要件となっています。

業務委託契約等収入については後述しますが、「2019年以前から」、「主たる収入として」、「今後も事業継続する意思があること」というのが重要です。

通常の法人や個人事業者のように2020年1~3月開業の方の特例は、業務委託契約等収入で申請される方に対しては用意されておりませんので、2019年以前に開業された方でなければ対象となりません。

また、他に業務契約等収入以上の収入がある場合には要件を満たしませんし、今後廃業を予定している方も要件を満たしません。

売上減少要件

2019年の月平均の業務委託契約等収入に比べて50%以上減少した月が、2020年1~12月で存在することが要件となっています。

給与所得や雑所得で申告されていることが前提となっているため、白色申告者と同様に月平均で比較します。

世帯主要件

世帯主に扶養されている方は、この業務委託契約等収入により申請することはできません。

通常の事業所得での申請の場合は世帯主であることは要件とされていませんが、雑所得・給与所得の場合には世帯主であることが要件として加わっています。

そのため、後述する必要資料にも申請者自身の名義の国民健康保険証の提出が必要となります。

事業所得なし要件

事業所得がある場合には、原則通りの事業所得で申請することを強制するための要件です。

業務委託契約等収入より少ない金額であっても、事業所得として申告している金額が1円でもある場合には、この給与所得・雑所得により申請する方法は使用できません。

②業務委託契約等収入とは

給与所得や雑所得のすべてが持続化給付金の対象となるわけではなく、あくまで雇用契約によらない業務委託契約等に基づく事業活動からの収入だけが持続化給付金の対象となります。

一例として申請要領には下記のような業種が掲載されています。

・雇用契約によらず、業務委託契約等に基づく事業活動からの収入がある方
・委任契約に基づき、音楽教室や学習塾の講師など、「生徒を教える」という役割を委任されている方
・請負契約に基づき、成果物を納品されているエンジニアやプログラマー、WEBデザイナー、イラストレーター、ライターなど
・業務委託契約に基づき、化粧品や飲料など、特定取引先の商品を届け、集金する業務を委託されている方など

ただし、様々なケースが想定されるためご自身が対象となるのか悩むケースも多いのではないかと思います。

③給付額

給付額は下記の計算式で算定します。

2019年の年間業務委託契約等収入ー対象月の業務委託契約等収入×12

なお、給付上限額は事業所得で申請される方と同様に100万円です。

④申請に必要な資料

必要資料は原則として下記の通りとなっています。しかし、例外もあるため詳細は申請要領をご確認ください。

・2019年分確定申告書第一表の控え
・2020年の対象月の売上台帳等
・申請者名義の国民健康保険証の写し
・通帳の写し
・本人確認書類
・業務委託契約等収入があることを示す書類(業務委託契約書、支払調書・源泉徴収票・支払明細書、通帳の写しなど)

このうち「業務委託契約等収入があることを示す書類」がかなり複雑ですが、しっかりと申請要領をご確認いただきご用意いただければと思います。

2.2020年1~3月に設立開業した法人個人事業者

今までの持続化給付金は2019年以前に設立開業された方を対象としており、2020年に設立開業された方は対象になりませんでした。

ただし、2019年12月31日に開業した方と2020年1月1日開業した方にも大きな差が出るなど様々な理由から、2020年1~3月に設立開業された方も6月29日以降は支給対象となります。

ただし、2020年4月以降の設立開業の方は未だに対象にはなりません。

①要件

要件については2019年以前に設立開業された方と大きな違いはありません。

違う点としては
・2020年1~3月に事業収入を得ていること
・設立開業月から2020年3月の月平均の事業収入に比べて50%以上減少した月が、2020年4月から12月に存在すること
という2点の要件です。

したがって、3月までに売上が一切なかった場合には対象になりません。

②給付額

給付額は下記の計算式で算定します。

設立開業月から2020年3月の月平均の事業収入×6-対象月の事業収入×6

2019年以前開業者の場合は12を乗じて計算しますが、2020年開業の場合は6を乗じて計算します。したがって、計算される支給額は基本的には少なくなります。

また、設立開業月は法人は履歴事項全部証明書に記載の法人設立日、個人の場合は開業届に記載された開業日で計算します。(操業日数に関係なく開業月は1ヶ月としてカウントします。)

なお、給付上限額は2019年以前開業者と同様に法人は200万円、個人事業者は100万円です。

③申請に必要な資料

必要資料は原則として下記の通りとなっています。しかし、例外もあるため詳細は申請要領をご確認ください。

・持続化給付金に係る収入等申立書
・通帳の写し
・(法人の場合)履歴事項全部証明書
・(個人事業者の場合)本人確認書類
・(個人事業者の場合)税務署の開業届出書または都道府県の事業開始等申告書

「持続化給付金に係る収入等申立書」には設立開業月から対象月までの事業収入を記載するため、別途対象月の売上台帳などを提出する必要はありません。

また、「持続化給付金に係る収入等申立書」には税理士による署名または記名押印を得る必要があります。

当事務所ではこの「持続化給付金に係る収入等申立書」の確認業務を行っておりますので、ご依頼の方は下記のページをご確認ください。

3.2019年中に設立開業したした法人個人事業者で2019年に事業収入がない場合

今までの持続化給付金は2019年に設立開業された方は「2019年創業特例」や「2019年開業特例」という特例が適用できました。

しかし、この特例を適用しようとしても2019年に事業収入がない場合には持続化給付金が申請できませんでした。そのため、2019年に設立開業したが許認可の取得や開業準備で事業収入が生じたのが2020年からだったという方から相談がとても多くありました。

そのため、6月29日以降からはこういった方についても申請が可能となりました。

①要件

要件については通常の申請と大きな違いはありません。

違う点としては
・2020年1~3月に事業収入を得ていること
・2020年1月から3月の月平均の事業収入に比べて50%以上減少した月が、2020年4月から12月に存在すること
という2点の要件です。

したがって、3月までに売上が一切なかった場合には対象になりません。

また、2019年中に設立開業していることから、事業収入が何月から発生していたとしても2020年1月から3月の3ヶ月の月平均の事業収入と比較することになります。

②給付額

給付額は下記の計算式で算定します。

2020年1月から3月の月平均の事業収入×6-対象月の事業収入×6

通常の場合は12を乗じて計算しますが、この特例を適用する場合は6を乗じて計算します。したがって、計算される支給額は基本的には少なくなります。

なお、給付上限額は通常の申請と同様に法人は200万円、個人事業者は100万円です。

③申請に必要な資料

必要資料は原則として下記の通りとなっています。しかし、例外もあるため詳細は申請要領をご確認ください。

・持続化給付金に係る収入等申立書
・通帳の写し
・(法人の場合)履歴事項全部証明書
・(個人事業者の場合)本人確認書類
・(個人事業者の場合)税務署の開業届出書または都道府県の事業開始等申告書

「持続化給付金に係る収入等申立書」には2020年1月から対象月までの事業収入を記載するため、別途対象月の売上台帳などを提出する必要はありません。

また、「持続化給付金に係る収入等申立書」には税理士による署名または記名押印を得る必要があります。

当事務所ではこの「持続化給付金に係る収入等申立書」の確認業務を行っておりますので、ご依頼の方は下記のページをご確認ください。

4.まとめ

今回の6月29日以降の改正により多くの方が支給対象に含まれたのではないかと思います。

ただし、支給対象が広がったことにより「2020年4月開業は含めてもらえないのか」や「業務委託は対象になったのにこういったケースは支給対象じゃないのか」のような更なる要望が増えそうな気もします。

また、申請のために税理士の署名が必要なことについてもかなりのクレームが出そうな気もしますが、もともと確定申告をしている方の公平性や、2019年創業特例を適用される方との公平性を考えると仕方がないのかと思っています。

一方、税理士としてはこの持続化給付金の申請において信頼できる専門家として選ばれたことは光栄に感じています。ただし、創業間もない方の売上の確認を必要とする業務のため、税理士以外に税務署や公認会計士などにも対象を広げてもよかったのではないかと思います。

税理士だけにすることによって業務を供給できる人数が減ることから料金は高くなってしまいます。また、持続化給付金の申請期限である1月15日ごろは年末調整の時期とも重なるため、申請期限ぎりぎりに税理士に依頼しても税理士としてはなかなか動きにくい状況が想定されます。

いろいろと思うところはありますが、事業者の皆さんのお役に立てるよう様々な情報を提供できればと思います。