【賃上げ促進税制】全企業向け賃上げ促進税制の概要

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全企業向け賃上げ促進税制は、おおよそ全ての法人・個人事業主が利用できますが、「中堅企業向け」や「中小企業向け」に比べて控除割合は低めになっています。

【目次】
・適用対象、適用期間
・必須要件
・控除割合
・上乗せ要件

※本記事は2025年3月14日時点の情報です。最新の情報は中小企業庁ホームページなどでご確認ください。
※本記事についての質問・相談は一切お受けしておりませんので、電話・お問い合わせフォームなどからのご連絡はお控えください。

適用対象、適用期間

全企業向け賃上げ税制の適用対象は、「青色申告書を提出する法人又は個人事業主」です。したがって、資本金の額や従業員数などに関わらず全ての企業が利用することが可能です。

ただし、白色申告の方は賃上げ促進税制を利用することができません。
なお、あくまで賃上げ税制を適用する事業年度や年において青色申告となっていれば良いため、前期が白色・当期は青色といった場合には、当期については賃上げ促進税制を利用できる可能性があります。

必須要件

全企業向け賃上げ税制の必須要件は、「継続雇用者給与等支給額が前事業年度より3%以上増えていること」です。

この「継続雇用者給与等支給額」の「継続雇用者」は、ガイドブックでは下記のように説明されています。

前事業年度及び適用事業年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者であって、前事業年度及び適用事業年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者であり、かつ前事業年度及び適用事業年度の全て又は一部の期間において高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象(具体的には、就業規則に「継続雇用制度」を導入している旨の記載があり、かつ雇用契約書等か賃金台帳のいずれかに、 継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載があること)となっていない者をいいます。

経済産業省:「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(令和6年8月5日公表版)44頁より

つまり、①前期と当期のすべての月で給与等を支給している国内の従業員であり、②雇用保険法に規定する一般被保険者であり、③高年齢雇用者安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない従業員が「継続雇用者」であり、その「継続雇用者」に支給した給与等の合計が3%以上増加していることを必須要件としています。

「雇用保険の一般被保険者であり」とあるように、継続雇用者は雇用保険に加入していることが必須となっているため、利用を検討している法人・個人事業主自身が雇用保険に加入していない場合は継続雇用者がいないため全企業向け賃上げ促進税制を利用することができません。

また、「継続雇用者給与等支給額」は、キャリアアップ助成金や出向元の給与負担金などの補填額を除いて判定する点についても注意が必要です。

具体的には下記のような計算式により3%以上の増加があるかを判定します。

経済産業省:「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(令和6年8月5日公表版)9頁より

この計算式のとおり前事業年度において継続雇用者に対する給与等の支給額がない場合は、分母が0円となり増加率も0%となってしまうため、全企業向け賃上げ促進税制は適用することができません。

また、この計算式により計算した割合によって、次の控除割合が変わってくるため重要となります。

さらに、以下のいずれかに該当する場合には、別ページにて紹介しているマルチステークホルダー方針の公表及びその旨の届出が要件となるため、適用する場合にはご確認ください。
・適用事業年度終了の時において資本金の額又は出資金の額が10億円以上かつ常時使用する従業員数が1,000人以上である法人
・適用事業年度終了の時において常時使用する従業員数が2,000人超である法人
・適用年の12月31日において常時使用する従業員数が2,000人超である個人事業主

控除割合

以下の表で税額控除する金額を計算しますが、適用事業年度の法人税額又は所得税額の20%が上限額になります。

【適用要件】
継続雇用者給与等支給額が前事業年度より
【控除割合】
控除対象雇用者給与等支給増加額のうち以下の割合を税額控除
3%以上増加10%
4%以上増加15%
5%以上増加20%
7%以上増加25%

上記のように継続雇用者給与等支給額が前事業年度より3%以上増加していれば適用することができますが、実際に税額控除する金額は控除対象雇用者給与等支給増加額の10~25%となっています。

「控除対象雇用者給与等支給増加額」とは、適用事業年度の「雇用者給与等支給額」から前事業年度の「(比較)雇用者給与等支給額」を差し引いた金額をいいます。

「雇用者給与等支給額」は国内雇用者に対する給与等の合計支給額であり、「継続雇用者給与等」のようにすべての月で給与等を支給していることや、雇用保険法に規定する一般被保険者であることなどの要件はなく、「継続雇用者給与等」よりも対象が広くなっています。

一方で「雇用者給与等支給額」も「継続雇用者給与等」も補填額を除いて計算する点については共通しています。

以上のように、「継続雇用者給与等支給額」の増加した割合によって税額控除できる割合が決定し、具体的な税額控除する金額は「雇用者給与等支給額」の増加額によって計算されます。

なお、上記にも記載しているとおり適用事業年度の法人税額又は所得税額の20%が控除上限額になります。したがって、適用事業年度において法人税額又は所得税額が0円の場合には、控除上限額は0円となるため、この全企業向け賃上げ促進税制を利用しても納付する税金は減少しません。

また、雇用安定助成金を受けている場合や、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度(地方拠点強化税制における雇用促進税制)の適用がある場合には、上限額などに所要の調整が必要になります。

上乗せ要件

【教育訓練費】
以下の①②を満たす場合には税額控除率を5%上乗せ
①教育訓練費の額が前事業年度より10%以上増えていること
②適用事業年度の教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であること

【子育てとの両立・女性活躍支援】
以下の要件を満たす場合には税額控除率を5%上乗せ
適用事業年度終了の時(法人)又は適用年の12月31日(個人事業主)において、プラチナくるみん認定(プラチナくるみんプラス認定も含みます。)又はプラチナえるぼし認定を取得していること。