※本記事は2025年3月14日時点の情報です。最新の情報は中小企業庁ホームページなどでご確認ください。
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賃上げ促進税制の「全企業向け」「中堅企業向け」の適用を判断する際に使用する「継続雇用者」について、以下のようなご質問頂くことがあります。

当社では本来であれば雇用保険に加入すべき従業員がいるが、手続き漏れなどで加入していない従業員がいます。
このような従業員でも、賃上げ促進税制の「継続雇用者」に該当するのでしょうか?
たしかに、中小企業庁ガイドブックでは継続雇用者について、前事業年度及び適用事業年度の全ての月において以下の3つの要件に該当する従業員を継続雇用者であるとの記載がされています。
①給与等の支給を受けた国内雇用者であること
②雇用保険法に規定する一般被保険者であること
③高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていないこと
したがって、雇用保険の加入手続きを失念していた場合には継続雇用者には含まれないと読み取ることもできます。
しかしながら、結論としては雇用保険の加入手続きを失念していた場合でも、雇用保険の一般被保険者に該当する労働時間であれば、賃上げ促進税制の「継続雇用者」には含めて判定します。
その理由については、法律の規定を読み解いていく必要がありますので、当ページで解説したいと思います。
継続雇用者とは
まず、賃上げ促進税制に関するルールについては「賃上げ促進税制法」という法律があるわけではなく、税金のルールの特例をまとめている「租税特別措置法」という法律で規定されています。
そして、租税特別措置法の「継続雇用者給与等支給額」という用語の解説の中に「継続雇用者」という言葉が初めて登場します。
租税特別措置法第42条の12の5 第5項第4号
継続雇用者給与等支給額
継続雇用者(法人の各事業年度(以下この項において「適用年度」という。)及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度(次号及び第十一号において「前事業年度」という。)の期間内の各月分のその法人の給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるものをいう。次号において同じ。)に対する当該適用年度の給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額及び役務の提供の対価として支払を受ける金額を除く。以下この号において「補填額」という。)がある場合には、当該補填額を控除した金額。以下この項において同じ。)として政令で定める金額をいう。(個人事業主については租税特別措置法第10条の5の4 第5項第3号で同様に規定)
つまり、重要な部分を抜き出すと「継続雇用者は、適用事業年度と前期の期間内の各月分のその法人の給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるものをいう」と規定しているわけです。
「政令」というのは、細かいルールを定めている「○○法施行令」という法律で、「○○法」という基本の法律だけでは規定しきれない部分を補足しています。
政令では継続雇用者について以下のように定めています。
租税特別措置法施行令第27条の12の5 第7項
法第42条の12の5第5項第4号に規定する政令で定めるものは、法人の同項第2号に規定する国内雇用者(雇用保険法第60条の2第1項第1号に規定する一般被保険者に該当する者に限るものとし、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条第1項第2号に規定する継続雇用制度の対象である者として財務省令で定める者を除く。第1号及び第2号において「国内雇用者」という。)のうち次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定めるものとする。
一 適用年度(法第42条の12の5第5項第4号に規定する適用年度をいう。以下この号及び次号において同じ。)の月数と当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度(設立の日(同項第一号に規定する設立の日をいう。以下この条において同じ。)を含む事業年度にあつては、当該設立の日から当該事業年度終了の日までの期間。以下この号及び次号において「前事業年度」という。)の月数とが同じ場合 当該法人の国内雇用者として当該適用年度及び当該前事業年度の期間内の各月分の当該法人の給与等の支給を受けた者(個人事業主については租税特別措置法施行令第5条の6の4第11項で同様に規定)
重要な部分を抜き出すと「継続雇用者は、国内雇用者のうち雇用保険法で規定する一般被保険者に該当する者に限り、継続雇用制度の対象者は除いたもの」と規定しています。
ポイントとしては「雇用保険法で規定する一般被保険者に該当する者」と規定されており、中小企業庁のガイドブックのように「一般被保険者である者」という規定ではないことです。
そのため、雇用保険の加入手続きを行った一般被保険者だけでなく、手続きを失念していたとしても本来一般被保険者に該当する従業員は、継続雇用者に含めると判断できます。
雇用保険法で規定する一般被保険者とは
雇用保険法では、一般被保険者について以下のように規定されています。
雇用保険法第60条の2
教育訓練給付金は、次の各号のいずれかに該当する者(以下「教育訓練給付対象者」という。)が、厚生労働省令で定めるところにより、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合(当該教育訓練を受けている場合であつて厚生労働省令で定める場合を含み、当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により厚生労働省令で定める証明がされた場合に限る。)において、支給要件期間が三年以上であるときに、支給する。
一 当該教育訓練を開始した日(以下この条において「基準日」という。)に一般被保険者(被保険者のうち、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者をいう。次号において同じ。)又は高年齢被保険者である者
重要な部分を抜き出すと「一般被保険者は、被保険者のうち①高年齢被保険者、②短期雇用特例被保険者、③日雇労働被保険者、以外の者」と規定しています。
また、雇用保険の「被保険者」については、同じ雇用保険法の第4条、第6条で規定されており、要約すると以下のように規定されています。
雇用される労働者のうち①1週間の所定労働時間が20時間未満である者、②継続して31日以上雇用される見込みがない者、以外の労働者(季節的労働者などの特例あり)。
ハローワークのパンフレットでは以下のように説明されています。

まとめ
それでは「継続雇用者」について改めてまとめると、
①適用事業年度と前事業年度のすべての月で給与等の支給を受けた国内雇用者であること
②国内雇用者のうち1週間の所定労働時間が20時間以上であり、継続して31日以上の雇用見込みがあること
※雇用保険の加入の有無は関係なし
③高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者ではないこと
④高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていないこと
以上4つの要件に該当するものを「継続雇用者」と判断します。